虐待サバイバーや機能不全家庭で育った人に読んでほしい本
休職中に今までため込んできた積読を消化中です。
とてもいい本だったのでご紹介です。
特に虐待サバイバーや機能不全家庭で育った方は、読むと”自分の何とも説明のできない変な能力”に納得ができるかもしれません。
トラウマってありますか?
皆さんはトラウマってありますか?
私は、自分にはトラウマはないと思っていました、「存在のない子供たち」という映画を見るまで。
Youtubeでジブリ映画の解説動画を漁っていた時「両親を訴えたい。僕を生んだ罪で」という広告動画のセリフに、強烈な共感を覚え劇場に足を運びました。大手の映画館では見られず、新宿の小さな映画館で見ました。
この題と広告から、なんとなく内容は察することができると思うんですが、まあ虐待と不平等のオンパレードなんですね。映画の序盤で、妹を守るために親に逆らった主人公の男の子”ゼイン”くんが階段で母親に割とガチ目に殴られるんですが、その場面を見た時に出た私の感想が
「あ、私、これ知ってる」
でした(笑)
今でもなんでこの感想が出たのか分かりませんw
分かる人だけ共感してえもらえればいいんですが、殴られるときに、何故か人って頭を守りませんか?ww
特に子供は小さいので、殴られる時って上から来るから頭を守りがちなんですが、その頭を守っているゼインくんを見た時、一瞬ゼインくんと私の体が同期しました。多分、エヴァに乗れるくらい同期した(笑)
私は何も記憶していないのに、体が覚えていたんですね。
記憶にないのに、体が覚えている。
これがトラウマなんだな~と思いました。
元々私は「ダンス映像を見ながら脳内で左右反転させて、その場でコピーダンスができる」という変な特技と、「映像を見て体を動かすことなく脳から体に信号を送り、ダンスを記憶する」という特技を持っているので、たまたま映像に体が反応した説もあるんですが、たぶん、これは意識して記憶していないのでトラウマだと思います。
私は基本的なストレス回避方法が寝るか記憶を消すかの二択なので、子どもの頃のしんどかったことって、覚えていません。多分、何も考えず記憶を消すことで生き延びてきたのでしょう。
この映画を見た後、1週間くらい引きずりました。でも、一番引きずったのはジョージ秋山の「アシュラ」ですね。
ちなみに、この映画には不法就労やなりすましビザ問題なんかもちょっと入っています。
書籍紹介
「逆境に生きる子たちートラウマと回復の心理学」
メグ・ジェイ
「いい本ないかな~」ネットを泳いでいた時に見つけた本です。”レジリエンス”という言葉で購入を決めました。
トラウマと言えばレジリエンス(適応力)が流行りの言葉ですよね。昔は「ストレスは体に悪いから徹底的に排除するもの」という考え方が流行っていましたが、今のブームは「どうストレスと共存・適応するか」「ストレスを解消する方法」になってきてますよね。自己啓発本やビジネス書なども、そういう系統の本が企画棚で展開されていますよね。
こちらの本はちょっと毛色が違います。どっちかっていうと「子ども時代が逆境の連続だった人」「子ども時代の出来事がなんとなく言葉として表現しにくい人」にお勧めの本です。お高い本で、2,860円(現時点でのamazon価格)ですが、買う価値はあったなと思っています。
ただ、先ほど述べたように、流行りのビジネス書系統のものではないので、そういったものに興味がある方は、その好奇心を満たしてくれる本ではないのでお気を付けください。
スーパーノーマルを軸に
この本では、様々な困難の中で育った逆境をバネに、人並み以上の社会的成功を収め活躍する人びとを「スーパーノーマル」と呼び、臨床心理学者である著者の元を訪れた学生やクライアントがどのように考え、その逆境を乗り越えてきたかをナラティブ・ノンフィクション(語りを中心としたノンフィクション)として本にしたものです。
著者のメグ・ジェイさんは 『人生は20代で決まる』という代表作を出版されているそうですが、私は読んだことがありません。(笑)ちなみに、この内容でTEDに登壇されたこともあるほどの代表作だそう。
最初に「スーパーノーマルって、すごいん?ふつうなん?」と戸惑いましたが、レジリエンスという言葉に惹かれて購入してみました。
目次と内容紹介
ここからは大きな見出しの軽い内容と、私が感じたこと・思い出したことを書いていきます。正直、私の体験談や記憶を書く必要はないと思うんですが、なんせ本が高額なので、学生さんには手が出しにくいと思うんですね。高校のバイト代だけで生活していた私なら、絶対に買わなかったと思います。
でも、若くて生きるのが辛い人にこそ、読んでほしい。買えなくても、図書館にないか調べてでも読んでほしい。その動機付けに「私の体験談への共感が使えるのではないか」と思ったので書いています。「あ!この人の体験談、ちょっと言ってることわかるかも!じゃあ読んでみよう!」って思ってほしい。お金がある大人は読み飛ばして結構です(笑)
ただね~、こういうことが当たり前になっていたり、他人の目から届かないゆえに起こりやすい田舎ほど、図書館の蔵書数って少ないし、時代に乗れてないので、もしかしたら図書館にないかも。(うちの最寄りの図書館もそう。)
そしたら、友達と割り勘で買ってみてください。それか、毎月500円貯金したら、半年で買える!
1章 スーパーノーマル
ここでは”ヘレン”という女性のお話から、「スーパーノーマル」の歴史や定義、レジリエンスなど、本を読み進めていくうえでのベースが書かれています。
ヘレンの
「本当に疲れました。こんなことを言う自分の驚いています。(中略)ときどき、自分にはどこにも居場所がないように感じます。自分が何者なのかもわからなくなるんです。ほかの人たちとは違っているような、そんな気がします」
という言葉が胸に迫ってきましたね。
第2章 始まりの物語ー人生を変える出来事
ここでは”サム“という男性のお話から、レジリエントな子どもたちには、それぞれに独自の始まりの物語があるという話になります。
この章で
トラウマ研究者の第一人者であるベッセル・ヴァン・コークは、無意識のうちに「身体はトラウマを記憶する」と語ると出てくるんですが、思い当たることがあるので納得でした。ちなみにこんな本も出版されています。買おうか悩み中です。
第3章 秘密ーウソをつくことをまなぶ
この章では”スクールバスジャック”と”エミリー”という女性についてのお話です。脳が恐怖に圧倒されると言葉が出てこないし、説明できる言葉を持たなければ経験を言葉で表現することもできない。トラウマの経験を言葉に出来ない時、心のどこかにとどまり、形を成さないまま心の一部となり、やがて秘密のように感じられるとのこと。そもそも言葉がないとその体験について考えられないので、無意識的に隠され、思い出せないまま、ずっと影響を与え続けると。
私の記憶がないのも同じ原理なのかなとか思いました。そもそも親からの暴力やライフラインの停止が虐待だと認識できたのは通院し始めてからですね。いや、でも未だに「あの暴力は一般的なもので虐待ではなかったんじゃないか」と思う自分もいますからね。
根深い問題です。
第4章 戦うー怒りの役割
「幼少期に多くの困難にさらされれるほど、その子供は成長過程で自身の問題を抱えやすいのではないか?」という仮説を証明する研究で、「高リスクの子供ほど、問題を抱えやすいが、高リスクの子供の1/3は〈傷つきやすいがどんなことにも負けない〉立派な大人に成長していた」という結果が出ました。当人たちは、その成功が「確固たる決意によりもたらされた」と述べており、その決意は”怒り”という感情が前向きな行動と掛け合わさって、生まれた生産的な行動なのではないかというお話です。
私は以前、怒らない方法、怒りを感じてもコントロールできる方法がないのかと研究していた時期があったので、もう少し早くこの本と出会いたかった…!!!
これからの怒りは生産的な行動に使いたいです。
第5章 逃避ーファンタジーの力
ここでは”マーラ”という女性の話からはじまります。恐怖を感じた場合、脳は”戦う”か”逃げる”かの選択を迫りますが、どちらもできない場合、スーパーノーマルはじっとそこに座って状況に従おうとし、幼少期のそれを「ファンタジーの力」として話が進みます。
私の場合だったら、幼少期に親が叫び声が聞こえ手が出るような喧嘩をしていると認識した際、布団にもぐって理想的な家族を思い浮かべて楽しい日常を送っていました。(大体夫婦喧嘩のピークの深夜3時ごろに呼び出されて「離婚した場合、父親と母親とどっちについていくか」という選択を迫られる)
現状でも親に親を求めるのを諦め、「この人がお父さんだったらいいな」「こんなお姉ちゃんがいたらいいな」と思った人だけで脳内家族を構成したり、家族の中で「自分だけが理不尽な態度を取られるのは、自分だけがよその子で、居候であるからだ」と思って生活していますね。いろいろ心当たりがある章ですね(笑)
多くのスーパーノーマルにとって、最も開かれた逃げ場所は未来だ。予測可能で平均的な生活を送る子どもにとっては、現在を起きることは、気苦労もなくのびのびと日々を送れることを意味するだろう。彼らにとっては、未来は不確かであり、未来を考えることの方が怖い。しかし、スーパーノーマルが一番恐怖を感じるのは、変化ではなく、人生が今のまま続くことだ。前を見て大胆な行動をとったとしても、なにも失うものはない。
という個所に大変共感しました。私も行動力の化身みたいな人です。
第6章 警戒ー危険をすばやく探知する
ここではジャイアンのような姉のチャーリーから虐待を受けていた”ジェシー”という女性の話です。
実は家庭内の暴力は、親子間より兄弟間の方が激しいが、一般的で境目があいまいであるが故に無害だとみなされがちです。
ここではいくつかの研究の紹介から、ストレスによって脳が長期的に変化し、常に臨戦態勢を取るようになり、更にそのストレスを一般化させるという解説がされています。
まず、持続ストレスにより、脅威に対する過度な敏感さなどが長期的に変化します。
例えば、喧嘩している声が聞こえる実験では、非虐待の子供のグループは、喧嘩が収まったときに通常の精神状態まで戻るのに対し、虐待された子供のグループは、和解の声が聞こえ喧嘩が終わり静寂が訪れた後も、警戒モードのままだったそうです。
これは、長期間に及ぶストレスで脳の働きが抑制され、スーパーノーマルは子供も大人も常に覚醒状態となり、それを止められないからだそう。「時々、自分が野生の草食動物のような強い反応をする原因はこれなんだ~」と妙に納得しました。しかもこれ、元の危険にさらされなくなってからも何年も、場合によっては生涯続くそうです。
マジかよ。人生お先真っ暗かよ。
この様に警戒心を続けることを「危機の一般化」というようなのですが、いちいち新しい危機が迫ってきて警戒すると大変なので、一般化するのにも生き物としての一定のメリットがあるそうです。でも、逆に、虐待などを一般化してしまうことになるので、現状に疑問や正確な危機感を抱いたり、親と同じだと他人を一般化してしまい、信じなくなったりするようです。
心当たりがありますね(笑)
この章で、自分の言い表せない行動や状況を、研究から分析し言葉にしてくれるので、よく理解できたし、納得できたし、何より”言葉として説明される”安心感に包まれました。
第7章 スーパーヒューマンー強い自制心
この章では、特別な支援を必要とする兄ヘンリーがいる”エリザベス”という女性の話から始まります。
私も兄弟に障がい者がいるので、読んでいて何とも言えない気持ちになりました。(笑)
スーパーノーマルの誰もが有名な作家や芸術家や政治家になるわけではないし、特別な才能を必要とするわけでもない。しかし、その多くが持つ秘密兵器は、天性の(場合によっては後天的に身に着けた)自制心である。
と書かれていました。自制心の研究と言えばマシュマロ・テストですね。著者はスーパーノーマルはマシュマロ・テストも簡単にこなしただろうと予測しています。まあ、常にそんな試練を受けながら生きているようなもんですからね。
この章の最後のところで、エリザベスは大学の卒業式の日に「今日だけは私を優先して」とお願いしたのに、案の定兄が優先されてしまったので親にキレるんですが、それに対して母親が言ったセリフが、
誰からもかわいがられる子犬と、誰からも怖がられて近づきたいとは思わない子犬がいて、その子犬のどちらか一方を捨てるなら、かわいい犬でしょう?捨てても誰かが拾ってくれるでしょうから
と言いました。
本当に言葉悪いけど「地獄へ落ちろ」って思いました。素で。
いやいやいやwwww
だってさ、子どものころから兄のせいで我慢させられて、兄に殺されかけても守ってもらえなくて、家族が生きていくために一生懸命頑張って勉強して、誰のために生きてきたの?っていうような人生を、努力して生きてきた人が、最後のわがままを言ったら親に「捨てるならお前だ」って言われるって何wwwwwお前が人生から捨てられろやwwwwww
この時のエリザベスの気持ちを考えると、いたたまれなくて悲しくなりますね。ただ、親に「親になって」とお願いしたらこの仕打ちwwwwww
自分の親と重なって死ぬほど腹立ったwwww
以下、読み終わったら書き進めています。
書くことさえしんどいので、気になる方はぜひ購入を検討してみてください。
第9章 仮面ー偽りの自己
第10章 異邦人ー世界からの孤立
第11章 アンチ・ヒーローー光と闇の戦い
第12章 再起動ー新しい人生のはじまり
第13章 クリプトナイトー過去の残骸
第14章 秘密結社ー体験の共有
第15章 マントー他者を救う
第16章 復讐者ーよく生きる
第17章 愛の力ー「しあわせとは愛である」
第18章 ネバ―エンディングー伝えたいこと
結論:買ってよかった
私は「もし合わなければ読み終わったらあとでフリマに出せばいいから、兎に角買えなくなる前に買うべきだ」と本だけはガンガン購入して、いい物だけ手元に残すタイプなのですが、この本は保存決定です。
もう若干本棚あふれてきているので、積読解消してフリマに出すか、本棚を追加しなければならない…。
この記事が、誰かの人生の辛さを軽くする本との出会いに繋がれば、これ幸いです。
コメント
コメントを投稿